2025年10月の注目論文(Vol. 1)
伊豆津宏二(国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科 科長)
2025.10.09
血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2025年10月分(Vol. 1)は、伊豆津宏二氏が担当します。
J Clin Oncol. 2025 Jun 16:JCO2500204. doi: 10.1200/JCO-25-00204. Online ahead of print.
Rutherford SC, Li H, Herrera AF, LeBlanc M, Ahmed S, Davison K, Parsons SK, Unger JM, Perry AM, Casulo C, Bartlett NL, Tuscano JM, Hess BT, Torka P, Kumar P, Jacobs R, Song JY, Castellino SM, Kahl B, Leonard JP, Smith SM, Friedberg JW, Evens AM.
ここに注目!
進行期古典的ホジキンリンパ腫(cHL)に対する治療として、抗PD-1抗体ニボルマブ併用AVD(N-AVD)療法と、ブレンツキシマブ ベドチン併用AVD(BV-AVD)療法を比較した米国の第Ⅲ相試験(S1826)の事前に設定された高齢者(≧60歳)のサブセットの解析が報告された。試験全体では、60歳以下の患者が90%を占めており、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)においてN-AVD療法が優れていたが、主解析の時点では全生存期間(OS)曲線は重なっており、OSへのベネフィットは明らかでなかった1)。高齢者のサブセットではPFSの差がより大きく、N-AVD療法がOS曲線も明らかに上回っていた。従来のABVD療法では、ブレオマイシンに関連する肺障害の懸念があり、またECHELON-1試験では高齢患者におけるBV-AVD療法の明確なベネフィットが示されなかった中で、N-AVD療法の成績は極めて魅力的である。さらに日本では人口の高齢化を反映してcHLのうち高齢患者の占める割合が相対的に高く、N-AVD療法の恩恵を受けうる患者層が多いと考えられる。しかし薬事承認や保険適用には至っておらず、広く臨床現場で使用できる状況にはなく、今後の課題として残されている。
1) Herrera AF, et al. N Engl J Med. 2024;391(15):1379-1389.