2025年8月の注目論文
前田嘉信(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 血液・腫瘍・呼吸器内科学 教授)
2025.08.07
血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2025年8月分は、前田嘉信氏が担当します。
Blood. 2025 Feb 26:blood.2024026581. doi: 10.1182/blood.2024026581. Online ahead of print.
Zhao Y, Luo Y, Shi J, Wang S, Wang CX, Jiang E, Liang C, Zhu X, Zhang X, Meng F, Jin H, Zhao Y, Yu J, Lai X, Liu L, Fu H, Ye Y, Zhang C, Wang T, Tu L, Wang X, Huang H.
ここに注目!
JAK1/2は免疫活性化に、ROCK2シグナルは線維化に関与し、それぞれの阻害剤は慢性移植片対宿主病(cGVHD)に臨床的改善効果を示す。JAK/ROCKの同時阻害剤rovadicitinibがcGVHDの炎症性および線維性病態の双方に作用しうると期待され、Phase 1b/2a試験が中国の7施設で実施された。ステロイド抵抗性または依存性の中等度~重度cGVHD患者44例が対象。完全寛解9.1%、部分寛解77.3%で最良全奏効率(BOR)86.4%だった。ステロイド依存性群のBORは90.9%と高く、ruxolitinib無効例でも効果がみられた。ステロイド減量が88.6%で可能であり、完全中止が15.9%。主な有害事象は貧血(38.6%)、上気道感染(40.9%)、EBウイルス血症(36.4%)、治療中止に至った有害事象は9.1%であった。JAK/ROCK経路を同時に標的とするこの治療戦略は、cGVHDにおける新たな治療オプションとなり得ることが示唆された。