特集多発性骨髄腫の最新動向(3)多発性骨髄腫の診療は、近年新たな局面を迎えている。プロテアソーム阻害薬、免疫調節薬、抗CD38抗体の普及により予後は改善し、初発例では4剤併用療法が、再発・難治例ではCAR-T細胞療法や二重特異性抗体が実臨床に導入されつつある。さらに、ゲノム解析や微小残存病変(MRD)の高感度評価技術の進歩により、治療効果を正確に把握し個別化医療へ近づいている。本特集では、これらの最新動向を包括的に取り上げた。(責任編集 柴山浩彦)
再発・難治性MMにおける免疫療法
CAR-T細胞療法と二重特異性抗体
石田禎夫(日本赤十字社医療センター 血液内科)
2025.10.02
多発性骨髄腫(MM)は治療により奏効が得られても再発を繰り返す、血液疾患の中でも難治性が高い疾患である。一方、MMに対する新薬の開発は目覚ましく、2006年にボルテゾミブが承認されてからプロテアソーム阻害薬(PI)、免疫調節薬(IMiDs)、モノクローナル抗体などが次から次へと開発され、合計10種類の新薬が使用可能となった。しかし、仮に3剤併用療法を2~3レジメン使用してしまった場合は、多くの薬剤に耐性になり、有効な治療選択肢が限られてしまうのが現実である。このような患者に対する治療薬の開発が急務であった。2022年以降、待ち望んでいたキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法や二重特異性抗体療法が承認され、多くの患者に投与されている。本稿ではCAR-T細胞療法と二重特異性抗体に関して解説する。