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最新の血液疾患解説Comments On Hematology

特集多発性骨髄腫の最新動向(2)多発性骨髄腫の診療は、近年新たな局面を迎えている。プロテアソーム阻害薬、免疫調節薬、抗CD38抗体の普及により予後は改善し、初発例では4剤併用療法が、再発・難治例ではCAR-T細胞療法や二重特異性抗体が実臨床に導入されつつある。さらに、ゲノム解析や微小残存病変(MRD)の高感度評価技術の進歩により、治療効果を正確に把握し個別化医療へ近づいている。本特集では、これらの最新動向を包括的に取り上げた。(責任編集 柴山浩彦)

4剤併用療法が拓く未治療MM治療の新展開
治療選択肢の拡大と課題への対応

鈴木一史(東京慈恵会医科大学 腫瘍・血液内科)

多発性骨髄腫(MM)の生命予後は、2006年のボルテゾミブの登場以降、多くの新規薬剤の開発により、大きく改善した。一方、20世紀に開発された自家造血幹細胞移植(ASCT)は現在も初発多発性骨髄腫(NDMM)の標準治療であり、治療方針は移植適応か非適応かで大別される。近年は、NDMMに対する新規薬剤の併用療法の有効性の検証が進み、実臨床における治療選択肢はさらに拡大しつつある。ここではNDMMに対する4剤併用の有用性を中心に概説する。