特集多発性骨髄腫の最新動向(1)多発性骨髄腫の診療は、近年新たな局面を迎えている。プロテアソーム阻害薬、免疫調節薬、抗CD38抗体の普及により予後は改善し、初発例では4剤併用療法が、再発・難治例ではCAR-T細胞療法や二重特異性抗体が実臨床に導入されつつある。さらに、ゲノム解析や微小残存病変(MRD)の高感度評価技術の進歩により、治療効果を正確に把握し個別化医療へ近づいている。本特集では、これらの最新動向を包括的に取り上げた。(責任編集 柴山浩彦)
MM診療におけるゲノム情報の有用性
遺伝子変異を基盤とした診断・予後予測と研究の広がり
李政樹(名古屋市立大学大学院 医学系研究科 血液・腫瘍内科学)
2025.09.18
多発性骨髄腫(MM)では、FISH法による染色体異常の検出を中心とした診断基準が確立されており、また同種造血幹細胞移植は標準治療に位置づけられていないことから、これまでゲノム情報全般の臨床的有用性は限定的とされてきた。一方で、高リスク染色体異常や遺伝子変異に基づく「予後予測」の重要性は年々高まっており、特に難治例における薬剤選択の指標としても注目されている。ここでは、MMにおける遺伝子パネル検査によって得られるゲノム情報の有用性について、「診断」「予後予測」「治療薬選択」の3つの観点から現状を整理し、将来的な活用の展望を示す。