血液専門医と医療関係者のための情報サイト「ヘマトパセオ」

この論文に注目!Focus on

2019年7月の注目論文(Vol. 2)

前田嘉信(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 血液・腫瘍・呼吸器内科学 教授)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2019年7月分(Vol. 2)は、前田嘉信氏が担当します。

Haploidentical hematopoietic cell and kidney transplantation for hematological malignancies and end-stage renal failure.

Blood. 134(2):211-215

Chen YB, Elias N, Heher E, McCune JS, Collier K, Li S, Del Rio C, El-Jawahri A, Williams W, Tolkoff-Rubin N, Fishman JA, McAfee S, Dey BR, DeFilipp Z, O'Donnell PV, Cosimi AB, Sachs D, Kawai T, Spitzer TR

ここに注目!

以前からMassachusetts General Hospitalでは、末期腎不全の血液悪性疾患患者に対し、同一ドナーからの腎移植と造血幹細胞移植の同時実施が試みられてきた。今回、day3、4にシクロホスファミド(PTCY)を用いるPTCYハプロ移植が6名の患者に実施された。具体的には、透析を併用し、前治療(フルダラビン、エンドキサン、TBI 2Gy)を実施。day0に通常の腎移植を実施し、直後に造血幹細胞を輸注する。ハプロ移植後の免疫抑制療法はday3、4にシクロホスファミドとFK/MMFで、day100を目安に減量・中止された。6名中5名は多発性骨髄腫で、1名はNHL、4名は自家移植歴があった。1名がフルダラビンの神経毒性で死亡したため、フルダラビンの減量と透析の強化によりその後に神経毒性はみられていない。急性GVHD gradeⅡ-Ⅳは認められず、全員生着した。1名が再発したが、残り4名は腎機能正常で再発なく生存している。同種造血幹細胞移植と同一ドナーからの腎移植は、長期的に免疫抑制薬が不要となる点においても意義がある。

Comprehensive clinical-molecular transplant scoring system for myelofibrosis undergoing stem cell transplantation.

Blood. 133(20):2233-2242

Gagelmann N, Ditschkowski M, Bogdanov R, Bredin S, Robin M, Cassinat B, Shahswar R, Thol F, Heuser M, Soci_ G, Beelen D, Triviai I, Badbaran A, Kr_ger N

ここに注目!

骨髄線維症に対する同種造血幹細胞移植は治癒をもたらす治療法である。しかし、移植関連死亡があり予後に幅があるため、移植適応に使用できる予後予測モデルは重要である。骨髄線維症の予後予測モデルにはIPSS、DIPSSに加え、遺伝子変異を考慮したものがあるが、移植後の予後予測には不十分である。そこで、本研究では臨床データと遺伝子データを組み合わせたclinical molecular myelofibrosis transplant scoring system(MTSS)を作成し多数例でその有用性を検討した。スコア別に“低い、中間、高い、非常に高い”の4群に分けた結果、5年生存率がそれぞれ83%、64%、37%、22%と良好に識別できた。MTSSは、骨髄線維症に対する同種造血幹細胞移植の適応および予後予測に有用であることが示唆された。

Long-term ex vivo haematopoietic-stem-cell expansion allows nonconditioned transplantation.

N Engl J Med. 380(17):1628-1637

Wilkinson AC, Ishida R, Kikuchi M, Sudo K, Morita M, Crisostomo RV, Yamamoto R, Loh KM, Nakamura Y, Watanabe M, Nakauchi H, Yamazaki S

ここに注目!

造血幹細胞を生体外で増やす長期培養系において、ウシ血清成分やアルブミンのようなタンパク質を必要とすることが問題であった。本研究では、血清成分やアルブミンが、造血幹細胞の安定的な未分化性を阻害していることを明らかにするとともに、“液体のり”の主成分であるポリビニルアルコールが血清成分やアルブミンの代わりになるだけでなく、造血幹細胞の未分化性を維持したまま数カ月培養可能であることを明らかにした。さらに、stem cell factorが低濃度で、かつthrombopoietinが高濃度のバランスが最適な造血幹細胞の増幅因子として機能することを見出した。細胞治療のコスト削減や次世代の幹細胞治療にも応用可能な画期的な研究である。