血液専門医と医療関係者のための情報サイト「ヘマトパセオ」

この論文に注目!Focus on

2018年9月の注目論文(Vol. 1)

伊豆津宏二(国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科 科長)

2018.09.14

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2018年9月分(Vol. 1)は、伊豆津宏二氏が担当します。

Recommendations for managing PD-1 blockade in the context of allogeneic HCT in Hodgkin lymphoma: taming a necessary evil.

Blood. 132(1):9-16

Herbaux C, Merryman R, Devine S, Armand P, Houot R, Morschhauser F, Haverkos B

ここに注目!

再発・難治性のホジキンリンパ腫(HL)に対して、抗PD-1抗体の有用性が高いことが分かってきたが、その長期的な効果や安全性は未知である。若年のHL患者で自家移植後再発を来した場合、同種移植が治療選択肢となることが多かったが、同種移植後再発に抗PD-1抗体療法が行なわれたり、逆に抗PD-1抗体療法後に同種移植が行なわれたりすることが少なくない。同種移植前後の抗PD-1抗体療法の効果と安全性について、これまで後方視的研究がいくつか報告されているが、現時点での知見をまとめた専門家によるrecommendationとして重要な報告である。

High-grade B-cell lymphoma with MYC and BCL2 and/or BCL6 rearrangements with diffuse large B-cell lymphoma morphology.

Blood. 131(18):2060-2064

Scott DW, King RL, Staiger AM, Ben-Neriah S, Jiang A, Horn H, Mottok A, Farinha P, Slack GW, Ennishi D, Schmitz N, Pfreundschuh M, Nowakowski GS, Kahl BS, Connors JM, Gascoyne RD, Ott G, Macon WR, Rosenwald A

ここに注目!

WHO分類2017年改訂では、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の診断時にMYCBCL2BCL6の転座をFISH法により確認することが推奨されている。MYC転座とBCL2と/またはBCL6転座をともに認める場合、double/triple hit lymphoma(DHL/THL)としてDLBCL分類不能型(NOS)とは分けて診断することになっている。しかし、DLBCL全例でこれらの転座をFISH法で調べることはコストや時間を要するため大変である。細胞起源分類や、MYCBCL2の発現を免疫組織化学で確認することによりFISH法の対象を効率的に絞り込むことができるが、一定の取りこぼしが出てしまうことが示された。今のところDHL/THLに対してR-CHOP療法に替わるよりよい治療選択肢が見出されていないが、今後、DHL/THLの診断が実臨床でさらに重要となった場合、FISH法によるスクリーニングの対象をどうするかを考える際に参考になるデータになるだろう。

Diagnosis-to-Treatment Interval Is an Important Clinical Factor in Newly Diagnosed Diffuse Large B-Cell Lymphoma and Has Implication for Bias in Clinical Trials.

J Clin Oncol. 36(16):1603-1610

Maurer MJ, Ghesquières H, Link BK, Jais JP, Habermann TM, Thompson CA, Haioun C, Allmer C, Johnston PB, Delarue R, Micallef IN, Peyrade F, Inwards DJ, Ketterer N, Farooq U, Fitoussi O, Macon WR, Molina TJ, Syrbu S, Feldman AL, Slager SL, Weiner GJ, Ansell SM, Cerhan JR, Salles GA, Witzig TE, Tilly H, Nowakowski GS

ここに注目!

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の患者で、診断から治療開始までの期間(diagnosis-to-treatment interval: DTI)と予後の関係をみた研究。DLBCLは、一般的に診断後すみやかに治療を開始することが勧められているが、リンパ腫による症状が強かったり、リンパ腫のため臓器機能が危険にさらされていたりする場合、とくに早めに治療が開始される傾向がある。このような患者は予後が悪いだろうと予想されるが、本研究ではその通りの結果となった。DLBCLを対象とした最近のランダム化比較試験では、登録または割付前に病理診断の再評価や分子的検査が必要なものが増えており、最初の診断から治療開始までに要する期間が長くなっている。その結果、治療開始が一定期間待てるような患者が主に臨床試験に登録されることになり、実地診療の患者と比較して臨床試験の結果がよくみえてしまうバイアスの原因となりうる。また、ランダム化比較試験では標準治療群と試験治療群の差が付きにくくなる原因となりうる。DLBCL対象の臨床試験を計画する際には、患者選択や割付に必要な検査のためにDTIが大幅に延長することのないようにデザインの工夫が必要だろう。