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2018年10月の注目論文(Vol. 2)

張替秀郎(東北大学大学院 医学系研究科 血液・免疫病学分野 教授)

2018.10.18

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2018年10月分(Vol. 2)は、張替秀郎氏が担当します。

Unrelated cord blood transplantation in patients with idiopathic refractory severe aplastic anemia: a nationwide phase 2 study.

Blood. 132(7):750-754

Peffault de Latour R, Chevret S, Jubert C, Sirvent A, Galambrun C, Ruggeri A, Gandemer V, Cornillon J, Rialland F, Dalle JH, Forcade E, Bruno B, Paillard C, Rorlich PS, Salmon A, Fürst S, Sicre de Fontbrune F, Rubio MT, Bay JO, Mohty M, Larghero J, Gluckman E, Socié G; Francophone Society of Bone Marrow Transplantation and Cellular Therapy

ここに注目!

治療抵抗性重症再生不良性貧血に対するさい帯血移植(Phase Ⅱ)

治療抵抗性重症再生不良性貧血の予後は不良である。本研究は同疾患に対するさい帯血移植の有効性を検討するPhase Ⅱ試験である。対象は、初回免疫療法後6カ月時点で不応もしくは再発後二次治療に不応で、非血縁ドナーがいない症例である。前処置はFlu-Cy-TBI2Gyで、EBVの再活性化予防のためd5にリツキシマブの投与を受けている。解析対象は26人で、生着率は88%、primary endpointである1年後の生存率は88.5%であった。症例の年齢中央値が16歳で小児例が多く含まれていること、さい帯血がsingleもしくはdoubleで単核球が4×107/kg以上含まれていることなど特別な条件下でのさい帯血移植であり、エルトロンボパグが保険適応になった状況を勘案すると、この結果を日本の成人例に対するさい帯血移植に読み替えることは難しいが、一つの治療選択肢として考慮する価値はあるものと思われる。

Erythroferrone inhibits the induction of hepcidin by BMP6.

Blood. 132(14):1473-1477

Arezes J, Foy N, McHugh K, Sawant A, Quinkert D, Terraube V, Brinth A, Tam M, LaVallie ER, Taylor S, Armitage AE, Pasricha S-R, Cunningham O, Lambert M, Draper SJ, Jasuja R, Drakesmith H

ここに注目!

エリスロフェロンはBMP6によるヘプシジンの誘導を阻害する

エリスロフェロンはEPOにより刺激された赤芽球から分泌される糖たんぱく質で、へプシジンの分泌を抑制し、利用鉄を増加させる。しかしながら、エリスロフェロンによるヘプシジン分泌抑制のメカニズムは明らかとなっていない。へプシジンはBMP/SMAD経路により制御されていることが分かっているが、本研究においてエリスロフェロンはBMPファミリーのうちBMP5、6、7に対する阻害作用を有していること、その阻害作用はエリスロフェロンがこれらのBMPに結合しトラップすることにより発現することが明らかとなった。これらの研究結果は、今後、へプシジンをターゲットとした治療法の開発を進めるうえで、有用な情報となり得ると思われる。

MEF2B Instructs Germinal Center Development and Acts as an Oncogene in B Cell Lymphomagenesis.

Cancer Cell. 34(3):453-465

Brescia P, Schneider C, Holmes AB, Shen Q, Hussein S, Pasqualucci L, Basso K, Dalla-Favera R

ここに注目!

MEF2Bは胚中心形成における重要な制御因子であり、B細胞性リンパ腫のがん遺伝子として作用する

転写制御因子であるMEF2(筋細胞転写活性因子2 ; myocyte enhancer factor-2)ファミリーのサブユニットであるMEF2Bは、胚中心から発生するB細胞リンパ腫(濾胞性リンパ腫やびまん性大細胞型B細胞リンパ腫)の15%で変異が認められているが、胚中心やリンパ腫の発生における役割については明らかにされていなかった。本研究により、MEF2Bの欠失により胚中心の形成が減少すること、B細胞リンパ腫患者に認められるMEF2B変異をマウスに遺伝子導入すると、本因子とHUCA複合体やHDACとの結合が解除されることにより、標的遺伝子の発現が変化し、胚中心由来B細胞リンパ腫の発生や進展が誘導されることが明らかになった。以上から、MEF2Bは胚中心形成における重要な制御因子であり、B細胞性リンパ腫におけるdriver oncogeneであることが示唆される。