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2018年10月の注目論文(Vol. 1)

柴山浩彦(大阪大学大学院 医学系研究科 血液・腫瘍内科学 准教授)

2018.10.04

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2018年10月分(Vol. 1)は、柴山浩彦氏が担当します。

Once weekly versus twice weekly carfilzomib dosing in patients with relapsed and refractory multiple myeloma (A.R.R.O.W.): interim analysis results of a randomised, phase 3 study.

Lancet Oncol. 19(7):953–964

Philippe Moreau, Maria-Victoria Mateos, James R Berenson, Katja Weisel, Antonio Lazzaro, Kevin Song, Meletios A Dimopoulos, Mei Huang, Anita Zahlten-Kumeli, A Keith Stewart

ここに注目!

カルフィルゾミブの保険適用の用法用量は、デキサメタゾン(DEX)との併用であれば、56mg/m2を週2回で3週間投与し1週間休薬する。レナリドミド、DEXとの併用であれば、27mg/m2の投与量を同じスケジュールで行なう。カルフィルゾミブは再発・難治MMに対し、有効な薬剤であるが、週2回の点滴スケジュールを継続するのは、患者の利便性から難しい面がある。本試験ではDEXとの併用で、70mg/m2を週1回、3週間投与し1週間休薬する用法を、27mg/m2を週2回投与する用法と比較している。結果、週1回の方が、有意にPFSが優れ、安全性の面でも特に問題はなかったことが示された。週1回の投与法が承認されれば、患者の利便性は大幅に改善し、アドヒアランスも向上し、治療成績もよくなることが期待される。

T Cells Genetically Modified to Express an Anti-B-Cell Maturation Antigen Chimeric Antigen Receptor Cause Remissions of Poor-Prognosis Relapsed Multiple Myeloma.

J Clin Oncol. 36(22):2267-2280

Brudno JN, Maric I, Hartman SD, Rose JJ, Wang M, Lam N, Stetler-Stevenson M, Salem D, Yuan C, Pavletic S, Kanakry JA, Ali SA, Mikkilineni L, Feldman SA, Stroncek DF, Hansen BG, Lawrence J, Patel R, Hakim F, Gress RE, Kochenderfer JN

ここに注目!

本邦でMMに対する新規薬剤は、2006年以降、9剤が承認されている。しかし、MMはこれらの薬剤を駆使しても、やがて再発を繰り返し、難治性となる。本研究では、MM細胞の細胞表面に発現しているBCMAという抗原を認識するように遺伝子操作したT細胞(CART)による治療(BCMA-CART療法)の報告である。前治療のレジメン数の中央値が9.5の再発・難治MM患者16名が本治療を受け、全奏効率が81%、VGPR以上の深い奏効は63%の患者でみられ、無イベント生存期間の中央値が31週であり、髄外腫瘤を認めた患者にも有効であった。また、MRD測定を行なった患者11名ではすべてMRD陰性であった。サイトカイン放出症候群は一部の患者で重篤であったが、それによる死亡はなく回復している。以上の結果から、CART療法は、再発・難治MM患者の新たな治療オプションとして、今後も開発が継続されると思われる。

A phase 2 study of modified lenalidomide, bortezomib and dexamethasone in transplant-ineligible multiple myeloma.

Br J Haematol. 182(2):222-230

O'Donnell EK, Laubach JP, Yee AJ, Chen T, Huff CA, Basile FG, Wade PM, Paba-Prada CE, Ghobrial IM, Schlossman RL, Burke JN, Harrington CC, Lively KJ, Lyons HF, Munshi NC, Anderson KC, Trippa L, Richardson PG, Raje NS

ここに注目!

初発の移植非適応のMM患者に対する治療薬は、レナリドミド(R)とボルテゾミブ(V)が中心となっており、それぞれをデキサメタゾン(D)と併用したダブレットの治療法が主に行なわれている。また、移植適応の場合はこれらを併用したRVD療法が有効性も高く、初回治療として推奨されている。しかし、移植非適応の患者は主に高齢者であり、移植適応の場合に用いるRVDの用量では、有害事象のため継続が難しいという問題があった。本研究では、R、V、Dの相対投与量を減らした用量での治療(RVD lite)を第Ⅱ相試験として検証している。本試験に参加した患者(50名)の年齢中央値は73歳で、全奏効率が86%、VGPR以上が66%であった。また、PFSの中央値は35.1カ月とダブレットの治療よりも延長した結果であった。末梢神経障害の副作用は62%で報告されたが、G3は1名のみであった。これらの結果から、移植非適応のMM患者に対する初回治療として、RVD lite療法も選択肢の一つとなりうると考えられた。