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2018年11月の注目論文(Vol. 1)

前田嘉信(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 血液・腫瘍・呼吸器内科学 教授)

2018.11.08

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2018年11月分(Vol. 1)は、前田嘉信氏が担当します。

Outcomes of hematopoietic stem cell transplantation from unmanipulated haploidentical versus matched sibling donor in patients with acute myeloid leukemia in first complete remission with intermediate or high-risk cytogenetics: a study from the Acute Leukemia Working Party of the European Society for Blood and Marrow Transplantation.

Haematologica. 103(8):1317-1328

Salvatore D, Labopin M, Ruggeri A, Battipaglia G, Ghavamzadeh A, Ciceri F, Blaise D, Arcese W, Sociè G, Bourhis JH, Van Lint MT, Bruno B, Huynh A, Santarone S, Deconinck E, Mohty M, Nagler A

ここに注目!

AML第一寛解期におけるハプロドナー(Haplo)とHLA一致同胞ドナー(MSD)からの移植を比較したEBMTからの報告である。細胞遺伝学的中間リスク群においてHaplo移植は、GVHDや非再発死亡が多く、生存率が低下する一方、細胞遺伝学的高リスク群においては、同じくGVHDが多いが再発率が低い傾向にあり、全生存率ではMSDからの移植と有意差がない。細胞遺伝学的中間リスク群ではMSDが第一選択であるが高リスク群においては、両者は同等と結論されている。ドナー年齢、前治療強度の影響、細胞遺伝学的以外のリスク因子での解析が今後の検討課題となるだろう。

Mutation Clearance after Transplantation for Myelodysplastic Syndrome.

N Engl J Med. 379(11):1028-1041

Duncavage EJ, Jacoby MA, Chang GS, Miller CA, Edwin N, Shao J, Elliott K, Robinson J, Abel H, Fulton RS, Fronick CC, O'Laughlin M, Heath SE, Brendel K, Saba R, Wartman LD, Christopher MJ, Pusic I, Welch JS, Uy GL, Link DC, DiPersio JF, Westervelt P, Ley TJ, Trinkaus K, Graubert TA, Walter MJ

ここに注目!

同種造血幹細胞移植を受けた90例のMDS患者の骨髄と皮膚をエクソーム解析して変異を同定、移植後30日での変異クリアランスと予後を評価している。96%の患者に1つ以上の変異が同定された。移植後30日での変異アレル頻度が0.5%以上の残存変異が検出された患者は、検出されなかった患者に比べ進行のリスクが高く、1年無増悪生存率が低かった。これまでMRDの検出は形態、フローサイトメトリー、PCR、キメリズムなどで行なわれてきたが、感度と特異性の問題があった。本報告から微小な残存変異を移植の早期に検出することが可能であり、かつ予後に影響することから、今後は早期の治療介入に道を開くことになると思われる。

T Cells Genetically Modified to Express an Anti–B-Cell Maturation Antigen Chimeric Antigen Receptor Cause Remissions of Poor-Prognosis Relapsed Multiple Myeloma.

J Clin Oncol. 36(22):2267-2280

Brudno JN, Maric I, Hartman SD, Rose JJ, Wang M, Lam N, Stetler-Stevenson M, Salem D, Yuan C, Pavletic S, Kanakry JA, Ali SA, Mikkilineni L, Feldman SA, Stroncek DF, Hansen BG, Lawrence J, Patel R, Hakim F, Gress RE, Kochenderfer JN

ここに注目!

CARTは様々ながん腫に対しその臨床応用が試みられているが、多発性骨髄腫に対するCART療法の報告である。B-cell maturation antigen (BCMA)は正常および悪性形質細胞に発現しているが、その他の正常細胞に発現していないためCARのターゲットとして開発された。16名の再発難治多発性骨髄腫患者に対し、フルダラビンとシクロフォスファミドの前治療の後に投与された。63%のvery good PR/CRを含む81%の患者に奏効が得られた。サイトカイン放出症候群も見られたが可逆性であった。症例数が少ない、イベントフリー生存期間中央値が31週とまだ改善の余地がある、BCMAの発現にはばらつきが多く、再発症例で発現が低下した症例も認められるなど問題点もいくつかあるが、期待される治療法である。