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2018年5月の注目論文(Vol. 1)

木崎昌弘(埼玉医科大学総合医療センター 血液内科 教授)

2018.05.10

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2018年5月分(Vol. 1)は、木崎昌弘氏が担当します。

Pevonedistat, a first-in-class NEDD8-activating enzyme inhibitor, combined with azacitidine in patients with AML.

Blood. 131(13):1415-1424

Swords RT, Coutre S, Maris MB, Zeidner JF, Foran JM, Cruz J, Erba HP, Berdeja JG, Tam W, Vardhanabhuti S, Pawlikowska-Dobler I, Faessel HM, Dash AB, Sedarati F, Dezube BJ, Faller DV, Savona MR

ここに注目!

AMLに対するアザシチジンの新たなパートナーとしてのNEDD化阻害薬Pevonedistat

最近、AMLに対する分子標的治療薬の開発が目覚ましい。ユビキチン様タンパクNEDD8は、Culin-RING E3ユビキチンリガーゼ活性の制御(NEDD化)により細胞増殖に重要な役割を果たす。Pevonedistatは、NEDD化を阻害することでAML細胞の増殖を抑制することが知られている。今回、Pevonedistatの臨床第I相試験を経て、高齢者初発AML64例に対してPevonedistatにアザシチジンを併用した第Ⅱ相試験が行われた。全奏効率は50%で、20例が完全寛解に到達し、寛解持続期間中央値は8.3カ月であった。本剤のsurvival benefitについては今後の検討が待たれるが、Pevonedistatは通常の寛解導入療法ができないような高齢者AMLに対して、アザシチジンとの併用薬として期待が持てる新たな薬剤である。なお、本剤によるAMLに対する治験は、我が国においても始まっている。

Early detection and evolution of preleukemic clones in therapy-related myeloid neoplasms following autologous SCT.

Blood. 131(13):1846-1857

Gerbrig Berger, Leonie I. Kroeze, Theresia N. Koorenhof-Scheele, Aniek O. de Graaf, Kenichi Yoshida, Hiroo Ueno, Yuichi Shiraishi, Satoru Miyano, Eva van den Berg, Hein Schepers, Bert A. van der Reijden, Seishi Ogawa, Edo Vellenga, Joop H. Jansen

ここに注目!

自家移植後の治療関連骨髄性腫瘍における前白血病性クローン

京都大学の小川先生とオランダの研究グループは、自家移植後に2次性に骨髄性腫瘍を発症した18例について、経時的に全エクソン解析を行った結果を報告した。治療関連骨髄性腫瘍は、de novo MDSに比較して遺伝子異常の頻度が高いが、これらの症例では骨髄性腫瘍を発症する前から遺伝子異常を認め、前白血病性クローンの存在が明らかとなった。健常人にもCHIPと言われるクローン性造血を認めることが知られているが、CHIPは造血幹細胞の機能に影響を与え、骨髄微小環境が変化する可能性があり、前白血病性クローンの増殖に関連すると思われる。本研究により、自家移植のような強力な治療を行うことにより、前白血病性クローンが選択して増幅されることが治療関連骨髄性腫瘍の発症に関連する可能性が示された。CHIPは心血管系イベントの発症リスクにもなることから、自家移植のような強力な治療を行う際の予後因子になると思われ、臨床的にも重要な概念と考えられる。

Ibrutinib plus Venetoclax for the Treatment of Mantle-Cell Lymphoma.

N Engl J Med. 378(13):1211-1223

Tam CS, Anderson MA, Pott C, Agarwal R, Handunnetti S, Hicks RJ, Burbury K, Turner G, Di Iulio J, Bressel M, Westerman D, Lade S, Dreyling M, Dawson SJ, Dawson MA, Seymour JF, Roberts AW

ここに注目!

マントル細胞リンパ腫に対するIbrutinibとVenetoclax併用療法

マントル細胞リンパ腫の標準治療は確立されておらず、その予後は不良である。そのため、新規治療薬の開発が望まれている。今回、各々単独でも効果のあるBTK阻害薬IbrutinibとBCL-2阻害薬Venetoclax併用による新たな治療戦略が報告された。再発・難治23例、初発1例の24例のマントル細胞リンパ腫が対象であったが、多くはTP53遺伝子変異や高リスク染色体異常を有する症例であったにも関わらず、主要評価項目である16週間の完全奏効率は42%と、各々単独で行った場合に比べて極めて良好であった。マントル細胞リンパ腫に対しては、第2世代BTKであるAcalabrutinibによる優れた治療成績も報告されている1)。AcalabrutinibはIbrutinibに比し、BTKに対する特異性が高く、オフターゲット効果が少ないことより安全性が高まり、FDAにより再発マントル細胞リンパ腫の治療薬として承認された。

1) Wang M, et al. Lancet. 2018; 391(10121): 659-667.