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2018年3月の注目論文(Vol. 2)

張替秀郎(東北大学大学院 医学系研究科 血液・免疫病学分野 教授)

2018.03.29

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2018年3月分(Vol. 2)は、張替秀郎氏が担当します。

A landscape of germ line mutations in a cohort of inherited bone marrow failure patients.

Blood. 131(7):717-732

Bluteau O, Sebert M, Leblanc T, Peffault de Latour R, Quentin S, Lainey E, Hernandez L, Dalle JH, Sicre de Fontbrune F, Lengline E, Itzykson R, Clappier E, Boissel N, Vasquez N, Da Costa M, Masliah-Planchon J, Cuccuini W, Raimbault A, De Jaegere L, Adès L, Fenaux P, Maury S, Schmitt C, Muller M, Domenech C, Blin N, Bruno B, Pellier I, Hunault M, Blanche S, Petit A, Leverger G, Michel G, Bertrand Y, Baruchel A, Socié G, Soulier J

ここに注目!

遺伝性骨髄不全患者における先天遺伝子変異

小児、思春期の骨髄不全にはしばしば遺伝性骨髄不全が含まれていると考えられるが、多くの症例で診断がなされていない。遺伝性造血不全症に対しては、移植を実施する上でドナーや前処置の選択に配慮が必要であり、また不必要な免疫抑制療法を回避するためにも、その確定診断が重要である。本研究では遺伝性造血不全が疑われるが診断が未確定の179名の症例を対象に、皮膚線維芽細胞を用いて全エクソンシークエンスを行った。その結果、86例(48%)の症例に計28遺伝子の変異が同定された。その中には比較的まれと考えられていたSAMD9、SAMD9L、MECOM/EVI1、ERCC6L2といった遺伝子の変異が複数例で確認され、それらの変異を有する症例はそれぞれ特徴的な臨床経過を呈していた。これらの結果はゲノム解析が遺伝性造血不全症における診断やマネージメントに有効であることを示している。

Myeloablative Autologous Stem-Cell Transplantation for Severe Scleroderma.

N Engl J Med. 378(1):35-47

Sullivan KM, Goldmuntz EA, Keyes-Elstein L, McSweeney PA, Pinckney A, Welch B, Mayes MD, Nash RA, Crofford LJ, Eggleston B, Castina S, Griffith LM, Goldstein JS, Wallace D, Craciunescu O, Khanna D, Folz RJ, Goldin J, St Clair EW, Seibold JR, Phillips K, Mineishi S, Simms RW, Ballen K, Wener MH, Georges GE, Heimfeld S, Hosing C, Forman S, Kafaja S, Silver RM, Griffing L, Storek J, LeClercq S, Brasington R, Csuka ME, Bredeson C, Keever-Taylor C, Domsic RT, Kahaleh MB, Medsger T, Furst DE; SCOT Study Investigators

ここに注目!

重症全身性強皮症に対する自家移植

これまで、重症の膠原病に対して自家移植が試みられてきたが、その評価は固まっていない。本研究は、重症の全身性強皮症に対する骨髄破壊的自家移植の有効性を検討している。対象は5年以内の発症例で、重度の呼吸機能低下(%DLCOで50%程度)を有する全身性強皮症患者であり、対照群はIVCY(500-750mg/sq)12回群である。結果は、経過中の感染症が自家移植群で多かったものの、死亡率、呼吸不全は自家移植群がfavorableであった。本研究により、呼吸機能低下を伴う早期・進行性の全身性強皮症に対する自家移植はより前向きに考慮されるべき可能性がある。

Clonal hematopoiesis associated with TET2 deficiency accelerates atherosclerosis development in mice.

Science. 355(6327):842-847

Fuster JJ, MacLauchlan S, Zuriaga MA, Polackal MN, Ostriker AC, Chakraborty R, Wu CL, Sano S, Muralidharan S, Rius C, Vuong J, Jacob S, Muralidhar V, Robertson AA, Cooper MA, Andrés V, Hirschi KK, Martin KA, Walsh K

ここに注目!

TET2欠損関連のクローン性造血はマウスにおいて動脈硬化を促進する

加齢に従い、健常人においてもクローン性造血(CHIP)が認められることが報告されている(N Engl J Med. 2014;371:2477-2487)。CHIPを有する健常人は造血器腫瘍の発症リスクが高いことが知られていたが、硬化性心疾患のリスク因子にもなり得ることが、最近明らかになった(N Engl J Med. 2017;377:111-121)。本研究では、CHIPで認められるTET2の変異が粥状硬化性心疾患の発症に及ぼす影響を調べるため、LDLレセプター欠損マウスを用いて解析を行った。その結果、野生型骨髄細胞とTET2欠損骨髄細胞を同時に移植したマウスにおいて、TET2欠損細胞のクローナルな増殖がみられ大動脈では粥状硬化性プラークが著明に増大していた。in vitroによる検討ではTET2欠損マクロファージがNLRP3インフラマソームを介したインターロイキン1β分泌を増加させた。NLRP3阻害により、野生型細胞とTET2欠損細胞のキメラマウスは粥腫形成が減少した。これらの結果から、血液細胞におけるTET2体細胞変異は粥状硬化と関連することが示唆され、新たな治療標的である可能性が示された。