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2018年6月の注目論文(Vol. 2)

柴山浩彦(大阪大学大学院 医学系研究科 血液・腫瘍内科学 准教授)

2018.06.21

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2018年6月分(Vol. 2)は、柴山浩彦氏が担当します。

Selective Inhibition of Nuclear Export With Oral Selinexor for Treatment of Relapsed or Refractory Multiple Myeloma.

J Clin Oncol. 36(9):859-866

Vogl DT, Dingli D, Cornell RF, Huff CA, Jagannath S, Bhutani D, Zonder J, Baz R, Nooka A, Richter J, Cole C, Vij R, Jakubowiak A, Abonour R, Schiller G, Parker TL, Costa LJ, Kaminetzky D, Hoffman JE, Yee AJ, Chari A, Siegel D, Fonseca R, Van Wier S, Ahmann G, Lopez I, Kauffman M, Shacham S, Saint-Martin JR, Picklesimer CD, Choe-Juliak C, Stewart AK

ここに注目!

Selinexorは、経口のXPO1阻害剤である。XPO1は、核から細胞質に、がん抑制蛋白やステロイドレセプターを運搬する機能をもつ分子である。骨髄腫細胞において発現が亢進しており、また、これを標的とした骨髄腫治療が前臨床試験で確認されていた。本論文は、Selinexorとデキサメタゾンを併用し、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、レナリドミド、ポマリドミドに耐性(quadレフラクトリー)の48症例、それらに加え、抗CD38抗体薬にも耐性(pentaレフラクトリー)となった31症例に対する有効性・安全性を検証した第Ⅱ相試験の結果である。全奏効率は21%であり、quad・pentaのどちらにも同等の効果があった。治療奏効期間の中央値は5カ月、奏効例の治療開始後12カ月時点の生存率は65%であった。G3以上の副作用は、血小板減少(59%)、貧血(28%)、好中球減少(23%)、低Na血症(22%)、白血球減少(15%)、倦怠感(15%)であり、副作用中止を14例(18%)で認めた。Selinexorは、治療薬がないquad・pentaレフラクトリーの骨髄腫患者に対し、有望な薬剤の一つと考えられる。

Denosumab versus zoledronic acid in bone disease treatment of newly diagnosed multiple myeloma: an international, double-blind, double-dummy, randomised, controlled, phase 3 study.

Lancet Oncol. 19(3):370-381

Raje N, Terpos E, Willenbacher W, Shimizu K, García-Sanz R, Durie B, Legieć W, Krejčí M, Laribi K, Zhu L, Cheng P, Warner D, Roodman GD

ここに注目!

現在、骨髄腫において骨関連事象の予防には、ゾレドロン酸が多く用いられている。本試験では、骨髄腫患者(1718例)の骨関連事象の予防効果について、抗RANKL抗体デノスマブのゾレドロン酸に対する非劣性を検証している。結果、非劣性は証明された。また、安全性のプロファイルは、デノスマブで低カルシウム血症が多かったのに対し、ゾレドロン酸では、腎機能障害を多く認めた。顎骨壊死は同程度であった。注目すべきは、デノスマブ群の骨髄腫のPFSがゾレドロン酸群と比較し有意に延長が認められたことである(ただし、OSには差を認めない)。これは、RANKLが骨髄腫細胞の生存・増殖に寄与しており、RANKLを抑制することが抗骨髄腫効果につながったと考えられる。

Early relapse after autologous hematopoietic cell transplantation remains a poor prognostic factor in multiple myeloma but outcomes have improved over time.

Leukemia. 32(4):986-995

Kumar SK, Dispenzieri A, Fraser R, Mingwei F, Akpek G, Cornell R, Kharfan-Dabaja M, Freytes C, Hashmi S, Hildebrandt G, Holmberg L, Kyle R, Lazarus H, Lee C, Mikhael J, Nishihori T, Tay J, Usmani S, Vesole D, Vij R, Wirk B, Krishnan A, Gasparetto C, Mark T, Nieto Y, Hari P, D'Souza A

ここに注目!

自家移植後2年以内に早期再発を認めた骨髄腫患者の生命予後は不良であることが知られている。この事象は種々の新規薬剤が登場して変わったのかどうかを、CIBMTRのデータベースから3256例のデータを用い、移植を行った3つの期間(2001-2004、2005-2008、2009-2013)で比較検討している。結果、2001-2013の期間で移植後早期再発を来す患者の割合は35-38%で変わらず、早期再発例の生命予後は、晩期(2年以上たって)再発と比較し、有意に不良であった。しかし、年代を経るにつれ、早期再発患者の生命予後は改善がみられており、再発後治療における新規薬剤の恩恵がうかがわれる。早期再発率を低くする因子としては、ISSステージが低いこと、治療への反応性、2009年以降に自家移植を受けていること、移植後の維持療法などが挙がった。移植後早期再発する患者に対しては、さらに治療戦略を工夫する必要があることが明らかとなった。