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2018年7月の注目論文(Vol. 1)

張替秀郎(東北大学大学院 医学系研究科 血液・免疫病学分野 教授)

2018.07.05

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2018年7月分(Vol. 1)は、張替秀郎氏が担当します。

Tisagenlecleucel in Children and Young Adults with B-Cell Lymphoblastic Leukemia.

N Engl J Med. 378(5):439-448

Maude SL, Laetsch TW, Buechner J, Rives S, Boyer M, Bittencourt H, Bader P, Verneris MR, Stefanski HE, Myers GD, Qayed M, De Moerloose B, Hiramatsu H, Schlis K, Davis KL, Martin PL, Nemecek ER, Yanik GA, Peters C, Baruchel A, Boissel N, Mechinaud F, Balduzzi A, Krueger J, June CH, Levine BL, Wood P, Taran T, Leung M, Mueller KT, Zhang Y, Sen K, Lebwohl D, Pulsipher MA, Grupp SA

ここに注目!

若年B-ALLに対するTisagenlecleucel(抗CD19 CAR-T)治療

CD19陽性再発・難治B-ALLに対する抗CD19 chimeric antigen receptor T-cell (CAR-T)治療の有効性を検証した第Ⅱ相臨床試験である。投与を受けた症例は75例で、平均の骨髄芽球比率は74%、46例(61%)が同種移植を受けている。3カ月時点での全寛解率は81%で、これらの症例ではフローサイトメトリ―でのMRDが陰性となった。6カ月時点でのEFS、OSはそれぞれ73%、90%であり、12カ月時点でのEFS、OSはそれぞれ50%、76%であった。サイトカインリリースシンドロームは77%に認められ、48%が抗IL-6受容体抗体の投与を受けたが、脳浮腫の報告はなかった。これらの結果から、一過性の重篤な有害事象は高率に認められるものの、CD19陽性再発・難治B-ALLに対する抗CD19 CAR-T治療は有効であることが示された。

Genetic Inactivation of CD33 in Hematopoietic Stem Cells to Enable CAR T Cell Immunotherapy for Acute Myeloid Leukemia.

Cell. 173(6):1439-1453.e19

Kim MY, Yu KR, Kenderian SS, Ruella M, Chen S, Shin TH, Aljanahi AA, Schreeder D, Klichinsky M, Shestova O, Kozlowski MS, Cummins KD, Shan X, Shestov M, Bagg A, Morrissette JJD, Sekhri P, Lazzarotto CR, Calvo KR, Kuhns DB, Donahue RE, Behbehani GK, Tsai SQ, Dunbar CE, Gill S

ここに注目!

遺伝子改変による造血幹細胞におけるCD33のサイレンシングはAMLに対するCAR-T免疫療法を可能にする

CD33はAMLに対するCAR-T療法の魅力的な抗原であるが、正常の造血幹・前駆細胞にも発現しているため、CAR-T療法による正常造血の抑制が危惧される。本研究では、遺伝子改変による造血幹細胞におけるCD33のサイレンシングが、幹細胞の機能に及ぼさないことを、免疫不全マウスに対するヒト造血幹細胞移植実験およびアカゲザルの自家移植実験により確認した。さらにCD33をサイレンシングしたヒト造血幹細胞(CD33 KO HSC)を免疫不全マウスに移植し造血を構築したのちに、AML細胞株を移植した白血病モデルを作製し、抗CD33 CAR-Tを投与した。その結果、CD33 KO HSCは抗CD33 CAR-Tに排除されることなく、AML細胞のみが排除されることが確認された。腫瘍特異的抗原を見出すことがCAR-T療法を構築するうえでの課題となっているが、本研究により正常造血幹細胞における遺伝子サイレンシングを組み合わせることで、腫瘍特異的抗原の創出が可能であることが示された。

Long-term efficacy of reduced-intensity versus myeloablative conditioning before allogeneic haemopoietic cell transplantation in patients with acute myeloid leukaemia in first complete remission: retrospective follow-up of an open-label, randomised phase 3 trial.

Lancet Haematol. 5(4):e161-e169

Fasslrinner F, Schetelig J, Burchert A, Kramer M, Trenschel R, Hegenbart U, Stadler M, Schäfer-Eckart K, Bätzel M, Eich H, Stuschke M, Engenhart-Cabillic R, Krause M, Dreger P, Neubauer A, Ehninger G, Beelen D, Berdel WE, Siepmann T, Stelljes M, Bornhäuser M

ここに注目!

第一寛解期AMLに対するreduced-intensity conditioning(RIC)とmyeloablative conditioning(MAC)の長期有効性を評価する第Ⅲ相ランダム化比較試験

第一寛解期のAMLに対するRICとMACの長期的な有効性を検討した臨床試験である。対象はint-risk またはhigh-riskのAML CR1、ドナーはHLA一致同胞もしくは10/10 or 9/10-allele matchedの非血縁ドナーで、CY/TBI12Gy(MAC)とFlu/TBI8Gy(RIC)の長期成績を比較検討している。その結果、10年の長期フォローアップで両者に再発率に差がないことが確認された。本研究を評価するうえで考慮すべき点は、TBI8Gyを用いた比較的強度の高いRICであること、症例が60歳までリクルートされていることである。とくに後者については、日常臨床において原則50-60歳にCY/TBIを用いることはなく、実際に本研究においてもこの層におけるMAC群のNRM増加が成績に影響を及ぼしている可能性がある。心機能低下によりCY大量が適応できない患者や41歳以上でHCT-CIが高い症例などではCY/TBIではなくTBI 8Gy + Fluを選択する可能性があるかもしれない。