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2018年8月の注目論文(Vol. 2)

木崎昌弘(埼玉医科大学総合医療センター 血液内科 教授)

2018.08.23

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2018年8月分(Vol. 2)は、木崎昌弘氏が担当します。

Phase 3 Trial of Ibrutinib plus Rituximab in Waldenström's Macroglobulinemia.

N Engl J Med. 378(25):2399-2410

Dimopoulos MA, Tedeschi A, Trotman J, García-Sanz R, Macdonald D, Leblond V, Mahe B, Herbaux C, Tam C, Orsucci L, Palomba ML, Matous JV, Shustik C, Kastritis E, Treon SP, Li J, Salman Z, Graef T, Buske C; iNNOVATE Study Group and the European Consortium for Waldenström’s Macroglobulinemia

ここに注目!

マクログロブリン血症に対する標準治療は確立されていない。Dimopoulosら欧州の研究グループは、初発あるいは前治療歴のあるマクログロブリン血症150例を対象に、リツキシマブにブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬イブルチニブを併用した効果を調べた第Ⅲ相試験を発表した。主要評価項目である30カ月でのPFSは、リツキシマブ/イブルチニブ群ではリツキシマブ単独群に比し有意に改善した(82% vs 28%、p<0.001)。さらに、奏効率や貧血の改善も顕著であった。興味深いことにリツキシマブ治療で往々にして認められるIgM値のフレアやinfusion reactionも低かったとのことである。他の低悪性度リンパ腫と同様に、マクログロブリン血症でも治療期間を規定し、長期化する治療に関連したリスクとコストを減らすことを考慮しつつ、深く迅速な奏効が得られる併用レジメンの開発が必要かと思われるが、その意味でも重要な臨床試験の結果と思われる。

Somatic mutations precede acute myeloid leukemia years before diagnosis.

Nat Med. 24(7):1015-1023

Desai P, Mencia-Trinchant N, Savenkov O, Simon MS, Cheang G, Lee S, Samuel M, Ritchie EK, Guzman ML, Ballman KV, Roboz GJ, Hassane DC

ここに注目!

正常と考えられる集団の中に、造血器腫瘍に見られる遺伝子変異と同様の変異を有するクローン性造血が認められることが注目されている。特に65歳以上の高齢者の10%以上に認められ、将来的に急性骨髄性白血病(AML)や骨髄異形成症候群のみならず心血管系イベントを発症することが知られている。しかしながら、どのような遺伝子がどのように関与するかなどの詳細な情報は明らかでない。Desaiらは、臨床試験のための全米16万人を超えるコホートの中で後にAMLを発症した212例についてのゲノム解析を行ない、年齢をマッチさせた対照群と体細胞変異について比較検討した。その結果、IDH1/IDH2TP53DNMT3ATET2およびスプライシングに関連する遺伝子変異がAML発症のリスクとなり、特にTP53およびIDH変異を有する場合はすべてAMLが発症し、発症までは平均9.6年かかることが明らかになった。同様の研究成果がNatureにも報告されているが、こちらではASXL1変異もリスク因子となっている1)。次世代シークエンサーの普及によりpre-AML状態が明らかになりつつあり、近年のIDH阻害薬などの分子標的治療薬開発などの動向を見据えつつ、今後は分子標的予防という考え方も重要になるかと思われる。

1) Abelson S, et al. Nature. 2018; 559(7714): 400-404.

Circulating tumor DNA reveals genetics, clonal evolution, and residual disease in classical Hodgkin lymphoma.

Blood. 131(22):2413-2425

Spina V, Bruscaggin A, Cuccaro A, Martini M, Di Trani M, Forestieri G, Manzoni M, Condoluci A, Arribas A, Terzi-Di-Bergamo L, Locatelli SL, Cupelli E, Ceriani L, Moccia AA, Stathis A, Nassi L, Deambrogi C, Diop F, Guidetti F, Cocomazzi A, Annunziata S, Rufini V, Giordano A, Neri A, Boldorini R, Gerber B, Bertoni F, Ghielmini M, Stüssi G, Santoro A, Cavalli F, Zucca E, Larocca LM, Gaidano G, Hohaus S, Carlo-Stella C, Rossi D

ここに注目!

最近、「リキッドバイオプシー」という言葉をよく耳にする。血液などの体液サンプルを用いた検査手法であるが、無細胞状態で血中を循環する腫瘍由来DNA(circulating tumor DNA; ctDNA)は、腫瘍ゲノムの全体像を反映することが明らかになっている。したがって、血液サンプルを利用してctDNAを解析することで、がん組織の遺伝子プロファイルを知ることが可能であり、かつ患者への負担なく繰り返し検査できることから、がんの早期診断や治療モニタリングへの応用が期待されている。造血器腫瘍への応用はまだ少ないが、悪性リンパ腫では、生検組織が取りにくい場合も往々にしてあるため、リキッドバイオプシーの応用が期待される。この論文では、古典的ホジキンリンパ腫112例(初発80例、再発32例)におけるctDNAを用いたゲノム解析を行なった。古典的ホジキンリンパ腫では、40%の症例にSTAT6遺伝子変異を認め、ctDNAプロファイルと治療効果が相関することから、MRD検出のための有用な方法と考えられる。ホジキンリンパ腫では中間PET検査による予後予測や治療方針の決定が行なわれているが、ctDNAを用いることにより侵襲や被曝がなく検査可能であり臨床への導入が待たれる。