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2018年8月の注目論文(Vol. 1)

宮﨑泰司(長崎大学 原爆後障害医療研究所 所長)

2018.08.09

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2018年8月分(Vol. 1)は、宮﨑泰司氏が担当します。

Durable Remissions with Ivosidenib in IDH1-Mutated Relapsed or Refractory AML.

N Engl J Med. 378(25):2386-2398

DiNardo CD, Stein EM, de Botton S, Roboz GJ, Altman JK, Mims AS, Swords R, Collins RH, Mannis GN, Pollyea DA, Donnellan W, Fathi AT, Pigneux A, Erba HP, Prince GT, Stein AS, Uy GL, Foran JM, Traer E, Stuart RK, Arellano ML, Slack JL, Sekeres MA, Willekens C, Choe S, Wang H, Zhang V, Yen KE, Kapsalis SM, Yang H, Dai D, Fan B, Goldwasser M, Liu H, Agresta S, Wu B, Attar EC, Tallman MS, Stone RM, Kantarjian HM

ここに注目!

IDH1遺伝子変異は急性骨髄性白血病(AML)の6-10%程度で見られるが、その阻害薬であるivosidenib(IVO)の安全性と効果を検討する第Ⅰ相試験が、IDH1変異陽性の再発・難治性AMLを対象に単剤投与で実施された。IVOが投与された258例中、3例以上発生したGrade3以上の治療関連有害事象はQT延長(7.8%)、IDH分化症候群(3.9%)、貧血(2.2%)、血小板減少(3.4%)、白血球増加(1.7%)であった。有効性については、解析対象となった125例のうち完全寛解が21.6%、全奏効率は41.6%であった。IVO 500mg/日投与による重篤な有害事象は少なく、第Ⅰ相試験段階で高い有効性を示した。また、AMLではAPLに続いて分化症候群が見られるなど、効果発現機構にも興味が持たれる。今後の開発の進展が大いに期待される分子標的薬といえるであろう。

Dual inhibition of EZH1/2 breaks the quiescence of leukemia stem cells in acute myeloid leukemia.

Leukemia. 32(4):855-864

Fujita S, Honma D, Adachi N, Araki K, Takamatsu E, Katsumoto T, Yamagata K, Akashi K, Aoyama K, Iwama A, Kitabayashi I

ここに注目!

急性骨髄性白血病(AML)は少数の白血病幹細胞(LSC)から生じており、治療抵抗性の残存LSCから再発が生ずると考えられている。LSCの幹細胞性維持には、ヒストン蛋白質の修飾を通じて遺伝子発現を調節するpolycomb repressive complex 2(PRC2)の役割が重要とされている。LSCではPRC2の構成成分であるEZH1、EZH2が高発現していることから、EZH1/2に対する阻害薬の効果を調べた。その結果、マウスモデルなどの検討でEZH1/2両者の阻害によってLSCが細胞周期へと導入され、治療感受性が獲得されてLSCの排除へと繋がった。EZH1/2の新規小分子阻害薬を用いた検討では白血病細胞株、患者検体においても効果が見られ、造血器腫瘍に対する新たな治療開発へと繋がることが期待される。

Integrated molecular profiling of juvenile myelomonocytic leukemia.

Blood. 131(14):1576-1586

Murakami N, Okuno Y, Yoshida K, Shiraishi Y, Nagae G, Suzuki K, Narita A, Sakaguchi H, Kawashima N, Wang X, Xu Y, Chiba K, Tanaka H, Hama A, Sanada M, Ito M, Hirayama M, Watanabe A, Ueno T, Kojima S, Aburatani H, Mano H, Miyano S, Ogawa S, Takahashi Y, Muramatsu H

ここに注目!

若年性骨髄単球性白血病(JMML)は骨髄単球系細胞の増殖を特徴とする小児に見られる骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍で、多くにRAS経路の異常が見られるが、10-20%ではゲノム変異が明らかではない。この研究では150例のJMMLのゲノム変異を統合的に検討している。その結果、新たにALK/ROS1を巻き込んだ融合遺伝子が複数同定された。CrizotinibはALK/ROS1の阻害薬であり、その融合遺伝子を有する治療抵抗例に対してcrizotinibを投与したところ完全寛解が得られた。さらに全ゲノムのメチル化を検討し、予後不良と関連するメチル化パターン(急性骨髄性白血病と類似パターン)を同定している。JMMLにおいて、RAS経路に加えてALK/ROS1経路の存在を同定し、その分子標的治療の可能性を示した日本からの報告である。