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2017年11月の注目論文

張替秀郎(東北大学大学院 医学系研究科 血液・免疫病学分野 教授)

2017.11.24

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2017年11月分は、張替秀郎氏が担当します。

Luspatercept for the treatment of anaemia in patients with lower-risk myelodysplastic syndromes (PACE-MDS): a multicentre, open-label phase 2 dose-finding study with long-term extension study.

Lancet Oncol. 18(10):1338-1347

Platzbecker U, Germing U, Götze KS, Kiewe P, Mayer K, Chromik J, Radsak M, Wolff T, Zhang X, Laadem A, Sherman ML, Attie KM, Giagounidis A

ここに注目!

低リスクMDSに対するTGFβ阻害薬の有用性(Phase Ⅱ)

Luspaterceptは、activin受容体typeIIBとヒトイムノグロブリンのFcドメインを結合させた融合たんぱく質で、MDSの無効造血に関与していると考えられているGDF11を含むTGFスーパーファミリーに結合し、その活性を阻害する薬剤である。

本研究は、低リスクMDSに対するLuspaterceptの有効性を検証するopen label phase II studyであり、27例のdose escalation cohort、31例のexpansion cohortの計58例で実施された。Luspaterceptは3週に1度の皮下注射にて投与され、0.75-1.75mg/kgのhigh doseの投与を受けた51例中32例で赤血球造血の改善が認められた。また、本剤の投与による副作用は許容される範囲にとどまっており、この結果を受けて現在Randomized phase III studyが進行中である。

Gene Therapy in a Patient with Sickle Cell Disease.

N Engl J Med. 376(9):848-855

Ribeil JA, Hacein-Bey-Abina S, Payen E, Magnani A, Semeraro M, Magrin E, Caccavelli L, Neven B, Bourget P, El Nemer W, Bartolucci P, Weber L, Puy H, Meritet JF, Grevent D, Beuzard Y, Chrétien S, Lefebvre T, Ross RW, Negre O, Veres G, Sandler L, Soni S, de Montalembert M, Blanche S, Leboulch P, Cavazzana M.

ここに注目!

鎌状赤血球症に対する遺伝子治療について

鎌状赤血球症(SCD)は、βグロビンの6番目のアミノ酸であるグルタミン酸がバリンに置換されることで、低酸素曝露時にグロビンが重合化し、その結果赤血球が鎌状に変化し、血栓症をはじめとする種々の症状を呈する疾患である。

今回の研究では、鎌状化変性を阻害するβグロビンをレンチウイルスベクターで遺伝子導入した造血幹細胞を用いて、自家造血幹細胞移植を行い、その有効性を検証している。移植後15ヵ月を経過した段階で、導入したグロビンの発現が維持されており、臨床的にSCDの症状は認められておらず、この治療法が有用であることが示されている。一例報告であるものの、その手法はチャレンジングであり、先天性血液疾患に対する新たな治療法の開発という点で意義深いと思われる。

A phase 3 randomized placebo-controlled trial of darbepoetin alfa in patients with anemia and lower-risk myelodysplastic syndromes.

Leukemia. 31(9):1944-1950

Platzbecker U, Symeonidis A, Oliva EN, Goede JS, Delforge M, Mayer J, Slama B, Badre S, Gasal E, Mehta B, Franklin J

ここに注目!

低リスクMDSにおける貧血に対するdarbepoetin alfaの有用性(Phase Ⅲ)

本研究は、低リスクMDSに対するdarbepoetin alfaの有効性を検証するRandomized phase III studyである。対象は血清EPO濃度が500mU/ml以下のlow/int-1 risk MDSで、計147名が参加した。

その結果、輸血回数の減少、赤血球造血の回復のいずれにおいてもdarbepoetin alfa投与群で有意な改善が認められた。24週のrandomized phaseの後のopen label phaseではdarbepoetin alfaの投与間隔を3週に1回から2週に1回に短縮することが許容されており、その結果、赤血球造血の回復は14.7%から34.7%に上昇した。darbepoetin alfaの投与方法が1回あたり500μgで、投与間隔が3週間に1度と本邦で承認されている投与方法と異なるものの、その有効性・安全性についてはこれまでのphase II studyの結果を裏付けるものであった。